パラマウントベッド

インタラクティブ動画とLINEでカスタマーエンゲージメント向上を実現するパラマウントベッドの戦略

医療・介護用ベッド業界大手のパラマウントベッド株式会社は、一般生活者(BtoC)向けの健康事業を成長分野と位置付け、デジタルマーケティングに力を入れています。その取り組みの一環として導入されたのが、LINEとインタラクティブ動画DXサービス「MIL」と、LINEマーケティングツール「BotBonnie」です。今回は、マーケティング戦略で各ソリューションが果たしている役割について、健康事業推進部長の下倉氏と、デジタルソリューション事業部でインサイドセールスを担当する柴山氏に話を聞きました。

デジタルマーケティングを強化した背景

― まずは、パラマウントベッドの事業内容について教えてください。

下倉:当社は、医療・介護・健康の3つの領域で事業を展開しています。医療・介護事業は、病院や施設向けにベッドやシステムを提供するBtoB事業です。一方の健康事業は、一般のお客様向けにベッドやマットレスをはじめスリープテック事業を展開するBtoC事業です。

― お二人は現在、社内でどのような役割を担われているのでしょうか。

下倉:私は健康事業の責任者を務めています。健康事業は今後さらなる成長を目指す重要な分野で、約一年前にデジタルマーケティングチームを発足させました。

柴山:私は主に介護施設向けのインサイドセールスとカスタマーサクセスのテックタッチ領域を担当しており、現在は健康事業のデジタルマーケティングにも携わっています。

下倉:二人とも以前は、名古屋支店でBtoB事業のインサイドセールスの立ち上げに取り組んでいました。従来の営業は対面がメインだったのですが、デジタルを活用した非対面による営業の重要性を感じ、これまで接点が持てなかったお客様にもアプローチできるようになりました。その成功モデルが全社に浸透し、さらに「BtoCの健康事業ではデジタルマーケディングへ発展させる」という構想へつながり、チームを発足させました。

― 健康事業において、デジタルマーケティングが担うミッションを教えてください。

下倉:ベッドやマットレスを購入されたお客様に、質の高い睡眠を実感し続けてもらうためには、定期的なコミュニケーションが欠かせません。デジタルマーケティングを活用することで、単に商品を販売するだけでなく、当社製品を通じて長期的にお客様の健康を支え、カスタマーエンゲージメント向上を目指しています。

BtoC事業で抱えていた2つの課題

(左から柴山氏、下倉氏)

― MILとBotBonnieを導入する以前は、どのような課題を抱えていましたか。

下倉:課題のひとつは、マスメディアに依存したプロモーションの限界でした。マスメディアは短期間で認知を拡大でき、実際に放映後には指名検索によるサイト流入や店舗への来店者数も増加しました。ただ、ベッドやマットレスは長ければ10年以上の単位で買い替える商品です。そのため、継続して第一想起を得るためには、常に広告を打ち続けなければならず、費用対効果の面で課題がありました。

柴山:もう一つの大きな課題は、購入後のお客様との関係構築です。当社のベッドは、リクライニング機能やマットレスの硬さ調整など、非常に多機能です。しかし、実際には限られた機能しか使われていないことも多く、購入後にその良さを十分に実感していただけていないという現状がありました。

その日の気分やライフスタイルの変化に合わせて最適な使い方をしていただけるようサポートすることが、お客様の満足度を高め、結果として紹介やリピート購入といった形で売上にもつながっていきます。遠回りのように見えて、実は最も確実な成果につながるのが購入後のカスタマーエンゲージメントだと考えています。

― こうした課題を解決するためになぜLINEを選んだのでしょうか。

下倉:お客様にとって負担の少ないコミュニケーション手段を考えたとき、利用率90%超(※)のLINEが最も適していると判断しました。メールやアプリは開封されにくいこともありますが、LINEは開封率が高く、多くの方に日常的に使われています。また、内容が一律だと、興味のない情報が届いてストレスになることもあります。LINEなら、お客様の関心に合わせて、必要な情報を必要なタイミングで届ける個別対応も可能です。

導入の決め手は「MIL×BotBonnie」のデータ連携力

― MILとBotBonnieを導入する決め手は何だったのでしょうか。

下倉:私たちが本当に目指していたのは、お客様一人ひとりのニーズに合わせて情報を届ける、パーソナライズされたコミュニケーションの実現です。それぞれの関心に応じて最適な情報を届けることが、長期的な関係づくりには欠かせないと考えていました。

その手段として、動画で内容を分かりやすく伝えながら、同時にユーザーの関心がコンテンツのどの部分にあるのかを把握できるMILのインタラクティブ動画を活用し、一人ひとりの興味関心に基づく情報配信をLINEによって行う仕組みを構想していました。ところが、当時導入を決めていたLINEマーケティングツールでは私たちの構想が実現できないことが分かり、実現をあきらめかけていました。そんなとき、MILのご担当者様から「BotBonnieなら、MILのインタラクティブ動画とLINEをスムーズに連携できますよ」と紹介されました。

柴山:以前、介護施設向けのオンボーディング動画制作でMILさんに支援いただき、インタラクティブ動画活用の可能性を実感していました。その成功体験をBtoC領域でも活かせると考え、LINE運用にMILとBotBonnieの活用を決めました。

― どのようなことを実現したかったのか具体的に教えてください。

柴山:例えば、お客様がMILの動画の「寝つきの悪さ」に関するお悩み部分に興味を持った場合、その情報をBotBonnieに渡し、LINEで「寝つきに関するヒント」や「角度をつけて眠る入眠角度の紹介」など、パーソナライズされたコンテンツを配信できるようにしたいと考えていました。検討していた他のツールでは、こうした高精度なパーソナライゼーションを実現できませんでした。

導入後に実感したインタラクティブ動画×LINEの成果

― MILとBotBonnieを導入して短期間ですが、どのような効果を実感していますか。

下倉:まず、動画の視聴結果から興味別のコミュニケーションが実現できるようになったことに満足しています。また、そもそもベッドを検討する方は、「ベッド本体に関心がある方」と「マットレスに関心がある方」とに大別され、必要としている情報が異なります。そうした根本的なニーズの違いをコミュニケーションの開始時点で把握できるようになったことで、より適切なアプローチが可能になりました。

― 具体的にどのような成果を見込んでいますか。

柴山:一般的に全員に同じ情報を送るとLINEのブロック率は高くなりますが、今回の施策では、お客様が興味を示した内容に基づいて配信できるため、より低いブロック率が見込まれます。購入された方・未購入の方といったセグメントごとの配信にも対応できるようになり、それぞれに合った情報提供が可能になりました。

― BotBonnieならではの機能は活用されていますか。

柴山:はい。例えば、大阪マラソンのイベントへブース出展した際には、LINEの友だち登録を促す際に、BotBonnieの機能を活用してスクラッチキャンペーンを実施しました。ブースに訪れた方にLINE登録をしていただき、その場でスクラッチを楽しんでもらうという施策です。その結果、2日間で1,300人以上の新規登録者を獲得し、その後の別企画では同様のスキームと期間で2,000人以上と、お客様にも喜んでいただけたからこその結果だと感じています。

― 獲得したリードをそのまま放置せず、登録後のフォローも重要ですね。

下倉:そのとおりです。当社直営の眠りギャラリー全国5店舗では、ふらっと立ち寄ったお客様にもLINE登録を促しています。登録するとBotBonnieの眠りギャラリー限定スクラッチができ、当選すると枕をプレゼントする仕組みです。さらに、ご登録いただいたお客様の来店履歴はBotBonnieでタグ付けされ、適切なタイミングで情報提供やキャンペーン案内を行うことで、自然な形で購買につなげる仕組みを構築しています。

MILのインタラクティブ動画を活用したパーソナライズ配信も取り入れ、ECサイトと連携した情報の一元管理にもつながっており、「登録→関心の深掘り→再来店→購入」までの流れを作ることで、リードを適切にナーチャリングできるようになりました。

長く使うベッドだからこそ購入後のサポートがブランド価値を高める

― 購入後の顧客体験をより良くするために、今後取り組みたいことは何ですか。

下倉:ベッドを購入されたその日の夜から始まる体験に着目し、初回使用のタイミングから最適なサポートを提供していきたいと考えています。購入直後から価値を実感してもらうことで、信頼を育み、継続的な関係につなげていければと思います。しっかりと価値を感じてもらえれば、紹介や口コミにもつながり、将来的には再購入にも結びつきます。10年後にまた当社の製品を選んでもらえるような関係を築くこと。それこそが、カスタマーエンゲージメントの最大の価値だと考えています。

柴山:LINEを活用し始めて数カ月。登録者数は順調に増えている一方で、配信するコンテンツによってブロック率に差が出ることもわかってきました。ペルソナごとの反応傾向を分析し、価値ある情報かどうかを見極める必要性を強く感じています。

お客様一人ひとりに合わせた情報を届けなければ、せっかく築いた関係も続きません。パーソナライズしなければ意味がない。その思いは日々強まっています。今後は、データをもとにコンテンツの質を高め、より高い満足度につながる配信を追求していきます。

下倉:リアルとデジタルを融合したマーケティング(OMO)を強化し、お客様一人ひとりに寄り添ったよりよい睡眠を叶える製品とサービスで、健康的でその人らしい暮らしをサポートしていきます。

OMOでお客様にどんな体験を提供できるのか、これからの広がりが楽しみです。

インタラクティブ動画DXサービス「MIL」

MILのインタラクティブ動画は、視聴者自身が興味に応じてコンテンツを選択しながら視聴できる仕組みが特徴です。動画内でユーザーがどの情報に関心を示したのかという視聴データを取得でき、個々の関心を可視化できます。この視聴データをBotBonnieと連携させることにより、LINEを通じてユーザーごとに最適化されたコンテンツ配信が可能になります。

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